「メビウスの輪」12この頃、幸恵に電話しても、 仕事の話ばかりして面白くない。 まあ、俺も人のことは言えないけど。 いつもは話を聞いてくれるのに、 カウンセラーで飽きたかな。 俺も仕事が大変なんだぞ。 それにアル中の父親は肝障害で入院する始末。 あんな奴どうなっても構わないけど、 散々な目に合ってきたはずの母親や姉まで 慌てふためいて介護している。 放っておけばいいのに。 一応家族だからそういう訳にはいかないのだろうが、 精神的虐待や暴力を受けてきた者に義務があるのか? 母親もさっさと離婚していれば、 こんな面倒背負わなくても良かったのに。 なんて逃げ出しても連れ戻されるのがおちか。 結局、父親も母親もなんやかんや言ったって お互いを必要としてたのだろう。 共依存とやらかな。 そして俺と姉はアダルトチルドレン。 典型的なアル中一家だな。 姉もうちを出たいと言いながら、出る気配はない。 母に頼りにされ、父の入院でも献身的に介護してる。 いい子にばかりしてると今に爆発するぞ。 俺はもう優等生なんてやめた。 どうせ母にも認めてもらえないのだから。 俺は仕事に集中しよう。 あいつは相変わらずむかつくが、 気にしないことにしよう。 人と比較しても仕方ない。 「勝たない、負けない」だ。 前の自分より成長すればいいんだよな。 続き |